雨の日に眠くなるのはなぜ?
「低気圧と眠気」の関係を
医師監修で紹介
普段は何の問題もなく朝ベッドから起きられるのに、雨の日に限って、なぜかベッドからなかなか起きられないといった経験をしたことはありませんか?実はその原因には、低気圧が関係しているかもしれないのです。眠気以外にも、雨の日に身体がだるい、頭痛がするなどさまざまな体調不良を感じる方もいるのではないでしょうか。眠気や体調不良に負けず元気に過ごすために、天候と体調にどのような関係があるのかを知り、対策を考えることが大切です。
更新日:2024/07/02
朝起きると眠気が…低気圧の日に眠くなる原因は?
質の良い睡眠を取るには、心身ともに活動モードにさせる交感神経と、睡眠モードになる副交感神経の2つの神経がバランス良く構成されていることが必要不可欠ですが、ストレスによりこのバランスが崩れてしまうことがよく知られています。実は、この自律神経のバランスは気圧や天候の変化にも影響を受けやすいのです。具体的には、低気圧が原因で自律神経が乱れ、副交感神経が優位になって眠気が起きやすくなり、日中も思うように頭が働かないなどの不調に繋がってしまうことがあります。低気圧の日は雨が降りやすいため、「雨の日に眠くなる」という印象があるのです。
低気圧が原因の体調不良は眠気以外にもたくさんある!
低気圧が原因の体調不良は眠気以外にも次のような症状を併発することがあります。
- 頭痛
- 倦怠感
- 心拍数・血圧の低下
- 酸欠状態
- 古傷の痛み
- 肩こり
- 耳鳴り
このような症状が起きることを「気象病」と呼び、その中でもとくに多いとされているのが、頭痛や倦怠感です。これらの症状はすべての人に当てはまるわけではありませんが、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくできなくなり、自律神経が乱れてしまうと、こうしたさまざまな体調不良に繋がりやすいといわれています。
雨の日に眠いのは自然?
雨の日に眠くなるのは、低気圧が原因となる自律神経の乱れだけではなく、人間の身体に備わった本能も影響しているかもしれません。文明が発達していなかった時代、人々は、交感神経が優位になる晴れの日に狩猟や耕作などをして活動的に動き、副交感神経が優位になる天気の悪い日は休息を取り、疲労を回復し身体をリセットするという生活が定着していました。現代では、雨の音は別名ホワイトノイズとも呼ばれており、聴くことで自然との繋がりを感じストレスが軽減され、脳をリラックスさせる効果があるともいわれています。交感神経、副交感神経という言葉やその存在が知られていなかった頃から、人間は雨の日に本能的に休息を取っていたのです。
しかしながら、昔は雨の日に休むことができていたかもしれませんが、現代ではほとんどの人が天気の良い悪いに関係なく働かなければなりません。現代の生活スタイルは、人間の本能や自然の摂理に逆らっているため、ある程度の眠気を感じてしまうのは仕方がないともいえるでしょう。
ちなみに、低気圧のときに雨が降りやすい理由は、周囲よりも気圧が低い「低気圧」の中心付近に、周囲の風が反時計回りに吹き込んでくることによって、上昇気流を発生させ、そこに雲ができることで天気が乱れやすくなるからです。つまり、低気圧と雨、さらに人間の本能は非常に強く結びついているといえます。
眠気・片頭痛・天気の悪さが揃う場合は天気痛の可能性
紹介したように、低気圧のときに眠くなるのは人間の本能として自然なことといえますが、気象の変化は、眠気のほかにも心身にさまざまな影響をもたらします。気圧の変化、気温、湿度、風の強弱や向きなどさまざまなことが引き金になって身体に不調をもたらす症状全般を「気象病」といい、その症状が片頭痛や、関節痛などの持病の悪化、倦怠感や、頭、首、肩などの「痛み」である場合は「天気痛」とも呼ばれます。
天気が悪くなるタイミングでの眠気に加え、片頭痛などが生じる場合は、気象の変化による「天気痛」の可能性が高いでしょう。症状が気象の変化に起因するため、原因を取り除くことはできませんが、体質的に気象病(天気痛)になりやすいという方は、自律神経を整えるようにしていくと良いでしょう。具体的には睡眠前の入浴で湯船にゆっくり浸かって身体をほぐしたり、温かい飲み物を飲んだり、ツボ押しや音楽を聴いてリラックスしたり、寝室環境を整えるといった工夫がおすすめです。交感神経と副交感神経のバランスが整い、質の良い睡眠が取れるようになるため、結果的に天気痛の予防にも繋がります。また、高気圧から低気圧への変化、その逆の変化、あるいは梅雨が続く時期や台風の時期には気圧が変動しやすいため、身体への影響をあらかじめ注意しておきましょう。
天気痛と内耳の関係性
天気痛は、耳の奥にある内耳と深い関係があるといわれており、内耳が敏感な方(乗り物酔いしやすいなど)は、天気痛になりやすいといえるかもしれません。内耳には、視覚情報を脳から身体へと伝えるセンサーの役割を果たす三半規管という器官があります。三半規管で急激な気圧の変化を感じると、自律神経のバランスが崩れてしまい、天気痛が生じやすくなるのです。
こどもも天気痛が原因の眠気に悩まされる可能性がある
最近では、大人と同様、こどもも天気痛の症状である片頭痛の予兆としての眠気を含めて、気象が原因の不調に悩まされることが増えているといわれます。小学校に通うこどもが眠気を訴えて朝なかなか起きてこない、眠気以外にもだるさ、首や肩の凝り、頭痛を訴える、ということがしばしばあるのだそうです。とくに梅雨明けなどは気圧の変化が生じやすく、それに加えて急な温度変化による寒暖差も起こりやすい時期のため、身体が順応しきれなくなって不調に気づくということが珍しくありません。
こどもの片頭痛
一般的に20代から40代の成人した女性に最も多いとされている片頭痛ですが、天気痛の一つの症状としてこどもに現れることがあります。こどもの場合も、試験勉強や習い事などさまざまなことが原因で睡眠不足が続くというケースが多く、結果として自律神経が乱れ、大人と同じように天気の影響を受けて片頭痛の症状が出やすくなっていると考えられています。こどもにはしっかりと睡眠を取らせるようにしましょう。
こどもと大人の片頭痛の違い
こどもの片頭痛は、大人とまったく同じ症状というわけではありません。大人と比較すると、次のような相違点が見られることがよくあります。
- 頭の片側ではなく両側が痛くなることが多い
- 頭痛と同時か先行して腹痛が見られることがある
- 頭痛の持続時間が1時間~72時間
こどもの場合、4時間以上頭痛が続くとされる大人に比べて短時間で治まりやすい傾向があり、その後は何事もなかったように元気になるケースも多いので、仮病と勘違いされてしまうこともしばしばあります。
また、こどもに片頭痛の症状が出たとき「頭がズキズキ痛い」とはっきり症状を伝えてくれたら対処しやすいのですが、小学校低学年くらいまでは頭痛の感覚や自身の体調不良をうまく伝えられない可能性も高いので、注意が必要です。体調不良の原因は幅広いため一概にはいえませんが、普段と比較しても元気がなくて黙りがちになる、だるそうにしている、あくびが多い、集中力がないなどの場合は、片頭痛の可能性も視野に入れてみてください。
参考資料
こどもの天気痛の対処法
こどもの眠気やだるさ、片頭痛などを含めた気象の変化がもたらす不調への対処法としては、薬物療法ではなく、まずは早寝早起き、朝食をしっかり取るなど規則正しい生活をさせることが大切です。また、スマートフォンやパソコンの操作をしていると、液晶画面から発せられる光が睡眠を促すメラトニンというホルモンの分泌を妨げることになるため、就寝の1~2時間ほど前からはなるべく見せないように工夫すると良いでしょう。季節に合わせてエアコンや加湿器などを利用して、寝室の温度や湿度を最適に保つように整えることも天気痛を予防するポイントです。
まとめ
眠気をもたらす原因に深くかかわるのが低気圧であり、その低気圧のときには雨が降りやすいため、雨の日には眠くなるということがわかりました。さらに、低気圧によって自律神経が乱れてしまうと、眠気以外にも、頭痛、倦怠感、肩こりなどさまざまな不調をもたらすことがあります。気象の変化によって生じる体調不良は、大人だけではなく症状をうまく表現できないこどもにも影響している可能性があるので注意が必要です。
大人もこどもも、自律神経を整えるためにまずは生活習慣を見直しましょう。
自律神経を整えれば、睡眠の質も高まり天気に振り回されることなく元気に過ごせるはずです。