寝ても寝ても眠いときの
原因と改善方法を解説

寝ても寝ても眠いという方はいませんか?
もしかしたら睡眠障害の一つである「過眠症」かもしれません。
「過眠症」とは、夜しっかり寝ているはずなのに、日中過度な眠気を感じて起きていられない状態の「過眠」症状がみられる病気の総称です。原因はさまざまですが、自分では睡眠時間をきちんととっているつもりでも、体質や睡眠の質が影響して実は睡眠不足になっている可能性もあります。過眠になる原因をはじめ、病気としての過眠症や他の病気との関連性、日中の眠気の改善/予防策などについてご紹介していきます。

更新日:2024/10/16

日中の眠気やだるさ・・・考えられる原因は?

日中に、過度の眠気やだるさを感じて居眠りやうたた寝をしてしまうことを「過眠」と呼びますが、その症状の原因のひとつとしてまず考えられるのは、睡眠不足です。しかし、それだけが原因とは限りません。睡眠時間をとっているはずなのに、日中にコントロールできないほど眠くなってしまう場合は睡眠環境、生活習慣、ストレス・ホルモンバランスの乱れなど様々なことが関連している可能性があります。

1. 睡眠不足

慢性的な睡眠不足は、過眠となる原因のひとつです。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド」によると、1日の睡眠時間は成人で6~8時間程度が理想的だと言われています。しかしながら、適した睡眠時間は体質によって異なります。さらに季節や年齢によって変動するので、平均的とされる時間寝ていても自覚のない睡眠不足に陥っている可能性があります。十分な睡眠時間がとれていないと、頭がボーっとしたり、倦怠感や頭痛などを感じたりすることがあります。理想的な睡眠時間がとれていれば、朝起きたときの状態でスッキリと爽快感があるはずです。日中居眠りやうたた寝をしてしまう場合は、自分に合った睡眠時間を確保できているか見直してみた方がいいでしょう。

2. 睡眠環境

寝つきが悪い 睡眠環境が過眠の原因となることもあります。睡眠の質を高めるため睡眠環境は重要ですが、寝室の環境条件が良くないと寝つきが悪くなり、寝ている途中で何度も目が覚める、熟睡感が得られない、早くから目が覚めて眠れなくなるなどの不眠や睡眠不足に陥ることもあり、過眠が引き起こされやすくなります。

寝つきが悪い
気温
  • 寝室が暑すぎる、または寒すぎる

    ⇒寝つきが悪くなり、夜中に何度も目を覚ます

湿度
  • 湿度60%以上

    ⇒発汗しても乾きにくいうえ、結露ができやすい

  • 湿度40%以下

    ⇒乾燥により、喉を痛めるなどし、インフルエンザ等のウイルスが活発化する

明るさ/光
  • 部屋が明るすぎる、または白色照明を点灯している

    ⇒寝つきが悪くなりやすい

  • 就寝直前にスマホ/パソコン操作やテレビ視聴する

    ⇒光の影響でメラトニンの分泌が下がるため眠りの質が低下する

  • 物音や騒音

    ⇒睡眠の邪魔になる

  • テレビ音や音楽、話し声、歩行音、機械音など

    ⇒気になって眠れないことがある

寝具
  • 季節や寝室の温度/湿度に合わない寝具やパジャマを使用している

    ⇒寝汗がひどくなり夜中に寒気を感じるなど、睡眠を妨げる

3. 生活習慣

不規則な生活 生活習慣も過眠の原因となります。生活環境で考えられる原因を項目ごとにまとめていますので、不眠や睡眠不足を招く生活習慣を改善し、過眠のリスクを軽減しましょう。

不規則な生活
生活リズム
  • 不規則な生活をしている (シフト勤務、夜勤、受験勉強など)
  • 1日のリズムが不定 (起床 / 就寝、食事、入浴時間など)
睡眠時間
  • 十分な睡眠時間がとれていない
  • 平日と休日の睡眠時間に差がある(寝だめをするなど)
飲食習慣
  • 夕食の時間が遅い
  • 夕食量が多い
  • ダイエットをしている
  • 寝る前に飲酒や喫煙の習慣がある
  • カフェイン飲料を好む (コーヒー / 紅茶 / 緑茶)
  • 薬を服用している(睡眠薬 / 抗アレルギー薬など)
運動不足
  • 普段からあまり外出しない
  • スポーツや運動を好まない
ストレス
  • 悩みごとや心配事がある
  • 日常的にストレスを感じている

4. ストレス・ホルモンバランスの乱れ

【ストレス】

ストレスが過眠に影響している可能性もあります。質の良い睡眠をとるためには、自律神経の働きが欠かせません。脳と身体を活発に動かす役割を担っている交感神経と、リラックスさせて休息状態を促す副交感神経の2種類の神経がバランス良く働いていることが大切です。しかし、仕事や人間関係についてなど様々なことでストレスを強く感じてしまうと、この2種類のバランスが崩れて本来眠る時間である夜に眠れなくなり、睡眠の質の低下で日中に眠くなってしまうことがあります。

【ホルモンバランスの乱れ】

ホルモンバランスの乱れも過眠の原因となります。女性の場合は、月経前・妊娠中・閉経前後に女性ホルモンのバランスが崩れて、日中に眠気が起こりやすくなります。

月経前
  • PMS(月経前症候群)

    ⇒月経前の2週間は黄体期と呼ばれ、黄体ホルモン(プロゲステロン)量が増加し基礎体温が上昇するため、1日の体温リズムに差がなくなり日中に強い眠気が生じる

妊娠中
  • 妊娠前期による黄体ホルモンの増加

    ⇒日中に眠気を強く感じやすい

  • 胎動/腰痛/頻尿などにより夜中に頻繁に目覚める

    ⇒睡眠が不規則になるため、昼間急に眠気に襲われることがある

閉経前後
  • 閉経前後の更年期症状
  • 女性ホルモンの分泌量が極端に減少

    ⇒眠りが短く浅くなり、昼間に眠気が現れやすい

男性の場合でも更年期障害があり、ホルモンバランスの乱れから不眠などの睡眠障害が発症し、過眠を引き起こすことがあります。

春は「過眠」が増える?

春眠暁を覚えずという言葉があるように、日本では、日中に強い眠気を感じる季節は春だと一般的に考えられています。実際には、春が圧倒的に眠気を引き起こす時季だと証明する統計データはありませんが、日本の春は環境が大きく変化する方も多いため、ストレスや疲れにより眠気を感じる傾向にあります。

学生は卒業や入学、進学や進級、社会人になると就職や転職、転勤や引越しなど、年度の変わり目にあたる春は大変忙しく、睡眠不足・不眠のような睡眠障害が発生しやすくなります。

さらに、春は花粉症の時期と合致して、服用する治療薬の影響で、花粉症患者のうち約1/4が日中の眠気を強く訴えていると報告されています。

病気の症状としての過眠

過眠は、病気のひとつの症状として現れることもあり、次のような病名が考えられます。

  • 過眠症(中枢性過眠症)
  • 不眠症… 眠れなくて心身不調
  • 季節性感情障害(別名は冬季うつ病)
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • 概日リズム睡眠/覚醒障害… 体内時計の乱れ(時差ボケ、夜勤など)
  • 睡眠/覚醒相前進障害… 高齢者に多い、早くに目覚める
  • 睡眠/覚醒相後退障害… 若年層に多い、遅寝遅起き など

日中に耐えられないほどの眠気がある場合

強い眠気 夜間に十分な睡眠をとっているのに日中に耐えられないほどの強い眠気がある、日常生活に支障が出てしまうというときは、「過眠症(中枢性過眠症)」という病気の場合もあります。

特に、仕事で車や機械を運転操作するなどリスクを伴う作業を行う場合、途中で眠気に襲われると命に関わる危険性もありますので、病気が原因の可能性がある場合、睡眠専門外来などの医療機関を必ず受診するようにしましょう。

過眠症に分類される病気はいくつかありますが、代表的な3つについて紹介していきます。それぞれ対策や治療法が異なるので、専門医の指示に従うようにしましょう。

強い眠気

ナルコレプシー

ナルコレプシーは、過眠症の中では比較的多いタイプで、睡眠時間が十分であるにもかかわらず、日中異常な眠気に襲われる病気です。急に眠気に襲われる睡眠発作が起こり10〜20分ほどで目覚めるものの、また突然眠ってしまうということが起きます。10代の発症率が高く、30~40代で発症することもありますが50代ではまれです。試験中や大事な会議中、運転中など通常考えられないシーンでも眠気が襲ってきて居眠りをしてしまうため、社会的信用を失ったり、重大な事故に繋がるなどの可能性もあるでしょう。

ナルコレプシーの原因は、脳内のオレキシン神経(覚醒を保つ神経)が減る、または消えてしまうことにより起こります。オレキシン神経はレム睡眠(夢を見る状態)を抑制する働きがあるため、減る、消えてしまうことで神経系が機能しないと昼夜問わずレム睡眠にすぐ切り替わってしまうのです。

またナルコレプシーは情動性脱力発作を併発することがあり、大きく興奮するなど感情の大幅な変化に伴って体全体の筋肉が脱力します。レム睡眠中に脱力すると金縛り状態になり、入眠時幻覚が現れることもあります。

睡眠時間を確保したうえで、さらに眠気がある場合には覚醒維持薬、脱力発作には抗うつ薬が効果的と言われます。

反復性過眠症

反復性過眠症は、クライネ-レビン症候群とも呼ばれ、100万人に1〜2名発症する程度の大変珍しい病気です。1日で長時間(16〜20時間)眠る過眠症状が1年に数回発生するのが特徴です。過眠の期間は10日前後が一般的ですが、数週間継続することもあり、日常生活に支障をきたします。

こちらもナルコレプシーと同様に10代の発症率が高く、男女比率では男性の方が高いといわれています。
症例も少なく、個人差も大きいのですが、年齢があがるとともに自然と症状が出なくなっていきます。
過眠期を約14年間繰り返しつつ徐々に症状が軽くなっていった例もあるそうです。

過眠対策で炭酸リチウムが処方されますが、効力は100%ではなく、複数の薬剤と合わせて用いられます。覚醒維持薬は過眠期に服用すると攻撃性や衝動性を増すことがあるので注意が必要です。

突発性過眠症

突発性過眠症は、10〜20代の発症が多く、発生率はナルコレプシーと比較してやや少ないとみられています。原因が特にはっきりしないため突発性過眠症と称されています。

十分な睡眠時間にもかかわらず日中の強い眠気を引き起こす点でナルコレプシーと似ていますが、金縛りや情動性脱力発作、入眠時幻覚などは見られません。

突発性過眠症の場合、幼少期によく眠る子どもが10代から眠気の症状が強くなり長期化しやすいです。同じ家族の中で過眠症が発生しやすいことから、睡眠や覚醒に関係する遺伝的要素の影響を受けているという説があります。

薬物治療としては、ナルコレプシーと同様に覚醒維持薬が使われます。その他、日頃から睡眠時間を十分とるように医師から指導されます。

日中の眠気を改善・予防するためにできること

日中に突然発生する強い眠気を改善、予防するためにできることはどのようなことがあるのでしょうか?対処方法を3つ紹介します。一時的に実施するだけでは効果が見込めませんので、日常生活の中に適宜取り入れて習慣化するようにしてみてください。

1. 睡眠環境を見直す

睡眠環境 過眠の防止や改善のため、睡眠の質を向上させることが大切です。
睡眠環境を整える注意ポイントは次のとおりです。

睡眠環境
気温
  • エアコン、または扇風機、ヒーター、サーキュレーターを補助的に使用し季節に応じた室温に調節する
    (環境省では、夏28℃、冬20℃の目安を推奨しており、快適性の点で26〜28℃が理想)
湿度
  • エアコンの除湿機能、または除湿機/加湿器をうまく利用し、50%程度に保つ
明るさ/光
  • 寝る少し前から暗めの照明にしておく
  • 就寝前にテレビの視聴、スマホやタブレット、パソコンの使用は避ける
  • 寝室内で音の出るものは消しておく
  • 耳栓をする
寝具
  • 寝室の温度/湿度、季節に合った寝具を使う
  • パジャマは通気性のよい素材を選ぶ
  • 厚着や薄着をしすぎない
  • 体圧分散性と寝心地、寝返りのしやすさなどを考えられたマットレスを選ぶ
その他
  • 就寝前はアロマや音楽を聴くなど、リラックスできる時間を設ける
質の高い睡眠について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください

2. 適度な運動

ジョギング 身体的に多少の疲れがあると、寝つきが良くなり熟睡しやすいと言われるため適度な運動も効果的です。

朝や夕方など時間を決めて、可能であれば毎日軽い運動をするようにしましょう。運動にもいろいろな種類がありますが、ウォーキング/ジョギングや水泳など、全身を無理なく動かすことができる有酸素運動がおすすめです。有酸素運動では、長い時間をかけて運動することによって、酸素を短時間で体に行き渡らせて循環させるので、体脂肪が燃焼しやすくなるだけでなく、循環器(心臓や肺)の機能の活性化が図れることが、メリットです。

筋トレ(筋肉トレーニング)は室内で行うことができますが、無酸素運動にあたります。睡眠の質を向上させるには有酸素運動を生活に取り入れると効果がアップします。

また、就寝前に軽いストレッチや深呼吸を行うと寝つきが良くなります。

ジョギング
運動について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください

3. 体内時計の調整

起床して光を浴びる睡眠の質を向上させるには、体内時計の調整もとても重要になります。体内時計は別名、概日リズムと呼ばれ、およそ25時間周期と言われています。1日は24時間ですので、体内時計と比較すると1時間程度のズレが生じることになります。睡眠のリズムを整えるためには、起床後、朝食を食べる、カーテンを開けて部屋に太陽の光を取り入れるなど体内時計をリセットするための行動をとることが必要となります。

特に決まった時間に起きて朝日を浴びることによって、メラトニン(睡眠に誘導するホルモン)の分泌を抑えることができます。そして朝の日光浴の後14時間程度するとメラトニン分泌が始まり、夜にかけて分泌量が増してくると眠気が発生する仕組みです。そのため毎晩同じ時間に眠気を起こすには、まずは毎朝同じ時間に起床して光を浴びる習慣にすると良いでしょう。

起床して光を浴びる
体内時計について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください

予防のために心がけたいポイント

日中の眠気やだるさを感じないようにするためには、予防に努めていくことが大切です。厚生労働省の研究班がまとめた『睡眠障害対処12の指針』の項目をチェックし、実践してみるのも良いでしょう。

  • 睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分

    睡眠時間には個人差があり、ロングスリーパーもショートスリーパーもいます。年齢、職業、地域や季節などによっても異なります。平均より短くても、日中に眠気の来ない自分に合った睡眠時間であれば問題ありません。

  • 刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法

    夕方以降のカフェイン飲料(コーヒーやお茶類)や喫煙は避けましょう。寝る前は、ぬるめの湯で入浴、軽いストレッチ運動、リラックスできる音楽やアロマなども入眠に効果があります。

  • 眠たくなってから床に就く、就寝時刻にこだわりすぎない

    眠れないのに寝ようと努力しても逆効果になる場合があります。無理して早く寝ようとせず、まずは朝決まった時間に起きることを心がけてください。

  • 同じ時刻に毎日起床

    遅い時間帯に寝たとしても起床時刻を遅くならないようにします。毎日同じ時刻に起きる方が、睡眠リズムが整います。

  • 光の利用で良い睡眠

    朝起きたらまず太陽光を浴びて、体内時計を機能させ、早寝早起きを習慣づけます。夜は照明を暗めにすると入眠がスムーズになります。就寝前に明るい光、ブルーライトを受けることは避けましょう。

  • 規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣

    3食の食事時間を決めると生活リズムが整います。朝食はしっかり摂り、夕食は腹八分目にします。適度な運動により熟睡が期待できます。

  • 昼寝をするなら15時前の20〜30分

    午後早めに30分までの軽い昼寝は、体力の回復や脳のリフレッシュに有効です。夕方以降や長時間の昼寝は絶対に避けてください。

  • 眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに

    眠りが浅いのにずっと横になっていても眠ることができないと悩むだけです。割り切って遅く寝て早起きしましょう。

  • 睡眠中の激しいいびき・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意

    睡眠時無呼吸症候群/周期性四肢運動障害/むずむず脚症候群などの睡眠関連の病気が隠れているかもしれません。専門医の診察を受けましょう。

  • 十分眠っても日中の眠気が強いときは専門医に

    眠気で生活に支障が出ている場合は、過眠症や他の病気の可能性がありますので、専門医に相談してください。車の運転時は気をつけないといけません。

  • 睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと

    お酒は睡眠薬の代用になりません。寝酒をすると寝つきは良くなりますが、熟睡できず、かえって夜中に目が覚めてしまう可能性があります。寝酒の習慣は不眠の原因になるので注意が必要です。

  • 睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全

    睡眠薬を医師から処方されたら、指定された量を指示された時刻に服用すると安全です。自分で勝手に判断して、服用量やタイミングを変えないようにしてください。また睡眠薬とアルコール類を一緒に服用することは絶対にNGです。

引用:厚生労働省 精神・神経疾患研究委託費

「睡眠障害の診断・治療ガイドライン作成とその実証的研究班」
平成13年度研究報告書より

まとめ

いくら寝ても眠気が生じてしまう過眠の原因は、睡眠不足の他に睡眠環境、生活習慣、ストレス・ホルモンバランスの乱れなどが考えられますが、病気の症状のひとつとして現れている可能性もあるため、違和感がある、症状が長く続くといった場合には専門医師に相談することをおすすめします。

また、質の良い睡眠をとるための情報を詳しく知りたいという方は、フランスベッドのスリープアドバイザーからアドバイスを受けることもできます。ぜひお気軽に、ショールームへお越しください。

この記事の監修者

医師 木村眞樹子

日本睡眠学会専門医、日本内科学会 専門医
日本循環器学会専門医、日本医師会 認定産業医

東京女子医科大学医学部卒業後、東京女子医科大学病院循環器内科入局。現在も東京女子医科大学病院、および関連病院で内科、循環器科、睡眠科として診療にあたるほか、嘱託産業医として企業の健康経営にも携わっている。