一瞬で寝る方法は?
ベッドで簡単にできる入眠のコツ

夜に疲れや眠気を感じてベッドや布団に入っても、なかなか寝付けないことはありませんか?早く寝ようと焦るほどに、目が冴えてしまい眠れない経験をしたという方も多いでしょう。このような寝付けない状態が何日も続くとストレスが溜まり、不眠となって体調不良につながる可能性もあります。
こんな時にベッドや布団の上で簡単に実践できる瞬時に寝られる方法があればよいと思いませんか?
今回は、一瞬で寝られる入眠方法6選をはじめとして、質の良い睡眠を得るための睡眠環境づくりについて具体的に紹介いたします。

更新日:2024/11/06

一瞬で寝る方法は?

大切な仕事や予定などの前夜に限って、早く寝たいのに予想外に寝付けなくて辛いことがあります。どうしても寝付けない場合は、誰でも簡単に実践できる一瞬で寝る方法を試してみましょう。

ーかくれ不眠について詳しく知りたい方はこちらをご覧くださいー

方法1:軍隊式の睡眠法

軍隊式の睡眠方法とは米国の海軍飛行訓練学校がパイロットを対象に考案した入眠改善方法で、いろいろなメディアでも取り上げられています。睡眠法を実施して6週間で、96%のパイロットがどんな状況でも2分以内に眠ることができたという報告があるほどです。身体の各部分を意識しながら呼吸を整えるボディスキャン瞑想のような入眠方法で慣れるまでに多少の時間がかかるかもしれませんが、効果の高い軍隊式の睡眠法の流れをご紹介します。

1. 顔の全筋肉をリラックスさせる

はじめにベッドや布団の上で仰向けになって寝ます。目を閉じた後、深呼吸をしながら顔の全筋肉を順にリラックスさせていきます。繰り返し深呼吸を続ける中で、まず額の筋肉から、次に目、頬、舌、口、あごまで顔の上から順番に進めていき、部位ごとの筋肉を緩めてリラックスできるようにします。最終的には顔全部の力を解放した状態にしていきます。

2. 首・肩・背中・腕の力を抜く

深呼吸とともに手と肩を下ろして余分な力を抜きます。首から僧帽筋(首〜背中の肩甲骨辺りの筋肉)、背中にかけて緊張をほぐしてリラックスさせます。ベッドや布団に包まれているようなイメージを持ちましょう。そして、右の腕の力を抜いていきますが、上から下方に向けて、上腕二頭筋・前腕・ひじ・手首・手のひら/甲の筋肉を緩めていきます。左腕も同様に行います。

3. 胸・胴体の緊張を緩める

次に、胸・胴体の緊張を緩めます。首・肩・背中と両腕の筋肉がすでにリラックスしている状態なので、あとは深呼吸することで胸部の筋肉もすぐに力を抜くことができるでしょう。息をゆっくり吐きながら、胸や胴体がベッドや布団に沈み込んでまるで浮いているかのような感覚を持つと、リラックスしやすくなります。胸回りの筋肉が緩められたら、続いて胴体の筋肉が解きほぐされてすぐに力が抜けます。

4. 脚・足の筋肉を緩める

今度は脚から順に足先まで緊張を緩めていきます。右脚の付け根からはじまり、太もも・ひざ・ふくらはぎ・足首・足裏・つま先まで少しずつ筋肉の力を抜いて、ベッドや布団の上で浮いているイメージを持ちましょう。
右脚が済んだら、左脚も付け根からつま先まで部位ごとに力を抜いてリラックスできるようにします。
最後に両脚の筋肉から緊張感がなくなれば、ようやく体全体の力が抜けたことになります。

5. 頭の中を無の状態にする

小舟と青空全身の力が抜けたら、最後は頭と心を無にして、何も考えない状況を作ります。どうしても雑念が生じる場合は、「小舟に寝転んで青空を眺めている」「暗い部屋のハンモックで寝ている」など自分がリラックスできる映像をイメージするのが良いでしょう。
どうしても難しい場合は、「(何も)考えない」というフレーズを心の中で淡々と10回繰り返しましょう。
こうすることで、頭の中で「眠れないから辛い」や「早く寝たい」など余計なことを考えずにすみます。

小舟と青空

方法2:筋弛緩法

筋肉を緊張させた後に力を抜くことによって心身のリラクゼーションを図るのが、筋弛緩法です。正式には漸進的筋弛緩法と呼ばれます。米国のエドモンド・ジェイコブソン医師(内科・精神科医、神経生理学者)が開発したリラックス法で、1929年に発表後、不眠対策として世界に普及しました。
入眠を促進する効果があることが実際の研究などでも報告されている方法ですので、試してみましょう。

1. 手のリラックス

ベッドや布団の上に仰向けで寝て、両方の腕を伸ばします。まず握りこぶしを作ってぎゅっと力を入れて緊張状態にします。10秒経ったら一気に力を抜きます。20秒間そのままキープして、手がじんわり温かくなる感覚を味わいましょう。

2. 腕のリラックス

次に腕のリラックスです。両手で握りこぶしを作り、両肩へ近づけて、力こぶを作るポーズを取ります。両方の上腕部全体に思いきり力を入れて緊張させます。10秒経過したらすぐに力を緩めて、20秒間脱力状態にします。

3. 背中のリラックス

背中のリラックスは、上記の腕の場合と同様に、両手の握りこぶしを両肩方向へ近づけて、左右の上腕を曲げた状態から外側へ広げます。肩甲骨を背中の中心に寄せて10秒間待ちます。その後背中の力を一気に抜いたままで20秒キープし続けます。

4. 肩のリラックス

肩のリラックスは、まず両肩を上方へ持ち上げます。首をすぼめるような形にして、両肩を緊張させて10秒間力を込めます。その状態から一気に脱力させましょう。ストンと力が抜けたら、20秒間そのままにしておくと肩の緊張がなくなりリラックスできます。

5. 首のリラックス

最初に首を右方向にひねります。首に力を入れたまま10秒キープしてから、首の力を一気に抜いた状態にして20秒間キープします。同じように首を左方向にひねって10秒間力を入れたままにしてから一気に脱力させて20秒間そのままにします。

6. 顔のリラックス

口をすぼめる顔のリラックスは、口をすぼめて「う」を発音する時の口の形にします。奥歯をぐっと噛みしめて、顔の部位が顔の真ん中に集まるように力を入れ、10秒経過後に顔の力を全部抜きます。脱力時は口を開けたままにして20秒待つようにします。

口をすぼめる

7. お腹のリラックス

お腹のリラックスは、腹部に両手を置いた状態にし、お腹に精一杯力を込めて、置かれた両手を押し上げるようにします。力を入れたまま10秒経ったところで、一気に腹部の力を抜き、その後20秒間脱力状態を保って腹部の緊張を緩和させます。

8. 脚下側のリラックス

脚の下側をリラックスさせるためには、まず両脚をつま先まで伸ばし、両脚の下側の筋肉にぐっと力を入れて、10秒間キープします。その後、緊張した脚の下側の筋肉は完全に力を抜いて20秒間待ちましょう。くれぐれも脚がつらないように注意してください。

9. 脚上側のリラックス

脚の上側のリラックスは、はじめに両脚を伸ばしておいてから上方へつま先部分を曲げましょう。両脚の上面の筋肉に力を込めてできる限り緊張させて10秒待ちます。その後はすべて力を抜き切ってリラックス状態を20秒間継続させます。

10. 全身のリラックス

上記の9部位(手・腕・背中・肩・首・顔・腹・脚下側・脚上側)を同時に緊張状態にして力を入れて10秒間キープさせます。そして9部位とも一斉に力を抜いて20秒間待機します。緊張時も脱力時も、各部位が変化していく様子をゆっくり感じるように心がけましょう。

方法3:4-7-8呼吸法

4-7-8呼吸法は、中国伝統医学の思想を取り入れ、人間に備わる自然治癒力を活用する統合医療の重要性を唱えたアリゾナ大学のアンドルー・ワイル(Andrew Thomas Weil)医学博士が提唱したと考えられています。この呼吸法を継続して実践すれば、不眠からメンタル面の悩みまで幅広い効果が期待されています。原則は4-7-8秒をかけて行う呼吸法ですが、難しい場合は半分の時間から始めてもよいでしょう。

1. 息を全部吐き切る

呼吸楽な姿勢で座るか仰向けで寝ます。前歯の裏側の付け根に舌先をつけるとリラックスできます。
「呼吸」は息を吐いてから吸うのが基本とされていますので、最初に息を全部吐き切って、いったん肺を空っぽにしましょう。

呼吸

2. 4つ数えながら鼻から息を吸う

息を吸う時は口ではなく鼻から4秒で静かに息を吸い込みます。心の中で「1、2、3、4」とカウントしながら鼻から吸い込んだ息を、のど・気道の方へゆっくり送って肺の中に溜め込んでいくようなイメージを持ちましょう。

3. 息を止め7つ数える

吸った息を肺に送り入れたら、ここで一度息を止めます。楽な姿勢のまま無呼吸状態を7秒間キープします。この間はできるだけ何も考えず頭の中が空の状態になるようにし、無心で1から7まで数えましょう。

4. 8つ数えつつゆっくり口から息を吐き続ける

最後に口から息を吐き出します。唇をすぼめた形にして、肺の奥底から力を込めて8秒間で息を吐き切りましょう。「フーッー」と音が出るくらいで構いません。途中息切れしないように、長く細く安定して息を吐き出していきます。慣れてきたら、ここまでのステップを1サイクルと考えて4回実施しましょう。

方法4:アリス式睡眠法

アリス式睡眠法は、SNSのX(旧Twitter)の「10分以内で寝落ちする裏技」で世間の話題を呼んだ方法です。この睡眠法は誰でも簡単にすぐ取り組める入眠法で、特別な準備も全く必要がないのに非常に効果があるという声が多くあがっています。
手順は次のとおり進めますが、慣れるコツとしてはとにかく何も考えずにボーっとすることが大事だと言われています。

1. ベッドや布団の上であぐらをかき、目を閉じる

寝具の上に座ってあぐらをかくまずは寝具の上に座ってあぐらをかきます。ポジションが決まったら目を閉じ、以降は、体を絶対に動かさないように気をつけましょう。次に、普段眠っている時と同じくらいのリズムとスピードで、ゆっくりと深く呼吸をします。

寝具の上に座ってあぐらをかく

2. 頭の中を空にして、自然に浮かんでくる映像を無心で見続ける

頭の中を空っぽにして何も考えないことが大切です。何も考えない状態を1分以上保つのは簡単ではありませんがある程度時間が経つと(20秒以内)思ってもいない映像が頭に浮かぶことがあります。無意識の状態で現れてくる映像はあくまでも現象として捉えて、一切思考せずそのまま見続けましょう。

3. 半寝状態になったら横になる

ふと意識が戻って「今、半分寝ていた」という感覚になった場合は、そのままベッドや布団にゆっくり入って横になりましょう。もし寝付けない時は、横になった状態でもう一度はじめから同じステップを繰り返してみます。慣れてきたら、横になった状態から始めても良いでしょう。

方法5:快眠に効果のあるツボを押す

百会(ひゃくえ)快眠に効果のあるツボを押すのも一つの方法です。全身には多数のツボ(東洋医学では経穴)が点在し、それぞれの位置と効能が定められています。睡気を誘う快眠効果の高いツボは数種類ありますが、ツボ押しをして刺激を与えることで心身がリラックスして不眠対策になります。例えば、頭頂部の「百会(ひゃくえ)」、おへそ下部3〜5cm付近の「丹田(たんでん)」、手首の太い横じわ中央から親指2〜3本下側に位置する「内関(ないかん)」が有名です。
寝る前に気軽にツボ押ししやすい足裏と手のひらのツボをご紹介します。

百会(ひゃくえ)
ー快眠のツボについて詳しく知りたい方はこちらをご覧くださいー

失眠(しつみん)

失眠は、足裏のかかと中央付近のへこみ部にあるツボです。
緊張した神経を緩和して入眠に導く効果があるだけでなく、冷え性・むくみ等にも効くと言われます。
椅子に座るかベッドの上で足首を持ち上げ、反対側の手で握りこぶしを作って、ツボを押してから緩める動作を深呼吸に合わせゆっくりと約10〜20回繰り返しましょう。カイロや湯たんぽで温めてもOKです。

労宮(ろうきゅう)

労宮は、手のひらにある不眠対策のツボで、手を軽く握った際に人差し指と中指の先が手のひらに当たる中間の位置を、もう片方の親指の腹で押し上げて刺激を加えます。イメージとしては中指の骨の裏側へ親指を入れる感じで、人差し指の付け根方向に5秒間強めに押し上げてからゆっくり指を離します。深呼吸に合わせて5セット行いましょう。
心につながるツボで精神を落ち着かせる作用がありますので、ストレスやイライラ感などに効くうえ、疲労回復や自律神経を整える効果も期待できます。

方法6:脳や体の内部の温度を下げる

ソフトタイプの保冷剤や濡れタオル深部体温(体内部や脳内の温度)が高い状態では、すぐ眠りにくいと考えられています。入浴後にそのまま就寝しても、高い深部体温の状態が続くため寝つきが悪く眠りが浅くなったりします。
寝る直前までに深部体温が下がるように工夫すれば、スムーズな入眠ができるはずです。例えば入浴は寝る2時間前までに済ませておくのがベストとされます。深部体温自体を下げるためには、次の2ヶ所を冷やすのが効果的です。

ソフトタイプの保冷剤や濡れタオル

「頭寒足熱」という言葉もあるように、就寝する時に頭部(脳内)を冷やすことで入眠しやすく深い眠りが得られます。ただし頭部でも耳から下側の首を冷やすと脳が活性化してしまうので気をつけましょう。首部に生命維持機能(呼吸中枢を含む)があり、冷やされると生命の危機と察知して脳が覚醒する仕組みになっているからです。
ソフトタイプの保冷剤や濡れタオルをあらかじめ冷やしておき、寝る時に枕の上半分にセットすれば快眠につながりやすくなります。

手のひら

手のひらや足裏などには動静脈吻合(どうじょうみゃくふんごう)と呼ばれる血管があります。AVA(arteriovenous anastomosisの略称)という別名もあり、大きな連絡管によって動脈と静脈を結ぶ血管を指しています。体が温まると拡張する太い血管で、皮膚から熱を発散させて体温調節を行います。ですから手のひらを冷やせば、AVA血管の温度が低下するとともに深部体温も下げることができるため、自然な入眠に導くことができます。
スマホ操作やテレビ視聴によっても深部体温は上昇しやすくなるので、就寝時は頭部と手のひらを冷やすと入眠効果が期待できます。

睡眠環境を整えて質の良い睡眠を

睡眠人間が生活する時間の約1/3を占める睡眠を適切にとることで、身体と心がリラックスして疲労から回復させてくれます。質の良い睡眠を確保するには、第1に睡眠環境を整える必要があり、中でも寝具の選び方次第では睡眠の質に大きな影響を及ぼしますので、注意すべき点をまとめておきます。

睡眠
マットレス
  • 実際に寝てみることで快適さを確認する(寝る時の姿勢、身体が楽など)
  • 寝た直後、少し時間が経った後の状態を比較する
  • 全身や腰の沈み具合や圧迫感をチェックする
  • 寝返りのしやすさを確かめる
布団・毛布類
  • 吸湿/放湿性と保温性に富んでいる
  • 重すぎない
  • 首のカーブに合った高さがよい(首や肩に負荷をかけないため)
  • 通気性がよいもの(頭部の温度を下げるため)
  • 好みの素材や硬さを選ぶようにする
  • マットレスや布団との相性を考える
  • 購入の際はフィッティングが必要

まとめ

寝つきが悪い、眠りが浅いといった睡眠の悩みは年代を問わずよくある悩みとなっています。心身の疲労を癒す効果のある睡眠は、日常生活になくてはならないものです。日々の睡眠の質を向上させるため、一瞬で入眠できる方法をぜひ実践してみましょう。おすすめとして紹介した、軍隊式の睡眠法、筋弛緩法、4-7-8呼吸法、アリス式睡眠法、快眠に効果のあるツボ押し、脳や体の内部温度を下げる方法など自分にあった方法を見つけてみてください。同時に大切なのは日頃から睡眠環境を整えて眠りの質がアップするよう心がけることですので寝具にもこだわりましょう。

この記事の監修者

医師 木村眞樹子

日本睡眠学会専門医、日本内科学会 専門医
日本循環器学会専門医、日本医師会 認定産業医

東京女子医科大学医学部卒業後、東京女子医科大学病院循環器内科入局。現在も東京女子医科大学病院、および関連病院で内科、循環器科、睡眠科として診療にあたるほか、嘱託産業医として企業の健康経営にも携わっている。