寝過ぎると頭痛になるのはなぜ? その仕組みや治し方、予防法を知ろう

睡眠をまとめてしっかり取ろうとして長時間寝たのに、起きた時に頭が痛くなりかえって辛い思いをしたという経験はありませんか?この寝過ぎによる頭痛が頻繁に起きて困るという方もいるようです。なぜ寝過ぎた後に頭痛は起きてしまうのでしょうか?寝過ぎによる頭痛の仕組みと治し方、そして頭痛を起こさないための予防法を知っておきましょう。

更新日:2023/09/28

寝過ぎの時に起こる頭痛は2種類ある

頭痛はストレスや疲れなど様々な原因によって起こります。睡眠をしっかりとり、疲れをとろうとしたにも関わらず起こる頭痛の場合、寝過ぎによる可能性があります。寝過ぎた時に起こる頭痛には、一般的に片頭痛と呼ばれるものと緊張型頭痛と呼ばれる2種類が考えられます。片頭痛と緊張型頭痛は、それぞれ次のような特徴があります。

片頭痛の特徴

片頭痛は、片側のこめかみあたりがズキズキと脈打つような痛みが多いため、その名前で呼ばれることが多いですが、もちろん両側に痛みが起きることもあります。片頭痛は繰り返し起きることが多く、特徴としては吐き気が強く、光や音に敏感になり、頭痛が起きる直前に閃光が視界に現れることもあり、週に数回起きることも珍しくありません。また、片頭痛の症状は男性よりも女性に多く見られ、月経の直前に起きることもあるため女性ホルモンが関係しているとも考えられています。寝過ぎや寝不足、ストレスの他にも梅雨の時期など気圧の変化がきっかけで引き起こすことが多いのも片頭痛の特徴の一つです。

緊張型頭痛の特徴

緊張型頭痛は、片頭痛のようにズキズキと脈打つような強い痛みや、光・音に敏感になることは少ないですが、後頭部を中心に両側が痛むことが多いのが特徴で、首や肩の痛みを伴うことがあります。
緊張型頭痛には、一般的に2つのタイプがあると言われています。1つ目は、反復性緊張型頭痛で、これは同じ体勢を続けていると筋肉の血行が悪くなり、血管に老廃物が留まることで引き起こすと考えられる頭痛です。2つ目は、慢性緊張型頭痛で不安や心配ごとなど精神的なストレスが関係して脳自体に痛みを感じやすくなると考えられています。

なぜ寝過ぎると片頭痛になるのか

一般的に睡眠をとることはリラックス効果があるとされているのに、なぜ寝過ぎると片頭痛になるのでしょうか?これは自立神経が関わっています。自律神経は、交感神経と副交感神経に分かれていますが日中は元気に活動をするために、交感神経が血管を収縮させながら血液の循環を高めています。一方で寝ているときなどリラックスしているときは、副交感神経が血管を拡張して血圧や心拍数を低下させているため、血流が緩やかになり発汗を抑えるなど、筋肉をゆるめる役割を担っています。そのため睡眠が長すぎると、過度に副交感神経が働いた状態が続いてしまうため、起床時に反動が大きくなり、急に血管が拡張されて三叉神経が引っ張られ、片頭痛を引き起こすことがあるのです。片頭痛は、この他にもストレスや過労・高血圧・女性ホルモンのバランスが崩れるなど様々な原因があります。これらをきっかけに脳に感覚を伝える三叉神経が過度に刺激されてしまい、片頭痛を引き起こしてしまうとも考えられています。

なぜ寝過ぎると緊張型頭痛になるのか

寝過ぎと頭痛の中でも多いと言われる緊張型頭痛はどのような関係があるのでしょうか?
緊張型頭痛は、デスクワークやスマホ操作といった長時間同じ体勢のままでいることによる筋肉の緊張が原因で、血管を圧迫し血液の循環が悪くなることで起こり、重く締め付けられるような鈍い痛みを伴います。

寝過ぎによる緊張型頭痛の場合も、睡眠時に首や肩、手足など長時間姿勢が悪い状態が続くことで、身体に大きな負担がかかることが原因だと考えられています。中でも特に緊張型頭痛を引き起こしやすくなると言われる筋肉の部位は、背中の表面にあり首や肩にかけて繋がっている筋肉の僧帽筋、下あごから鎖骨まで広く覆っている筋肉の広頚筋、こめかみと耳の上から後頭部へ繋がっている筋肉である側頭筋です。これらの筋肉の血流が滞ると、その部分の筋肉に収縮と緊張が起こります。長時間姿勢が悪い状態で寝ていると、これらの筋肉が緊張するため緊張型頭痛が起こり、重く鈍い痛みが症状として現れます。

寝過ぎによる頭痛が起こりやすいのはどんな時?

寝過ぎによる片頭痛が起こりやすいのはどんな時なのか?上でもご説明したとおり、長く眠るほど、血流が緩やかになる役割である副交感神経が過度に働いた状態が続いてしまうため、起床時の反動が大きくなります。このような状態で、起床後に間を置かずに仕事や運動をするなど、急に血管の拡張を促すような動きをすると三叉神経が刺激され、寝過ぎによる頭痛が起こりやすくなります。

緊張型頭痛は、筋肉の緊張が原因で起きることが多いため、長時間同じ姿勢でいることや、長時間寝相が悪い状態でいることで症状が出やすくなります。他にも強いストレスを抱えていると、頭痛の頻度が増えるとされています。仕事や家事などが立て込んでいて忙しく、ストレスを感じる状態から解放された後の睡眠でも緊張型頭痛を引き起こしやすくなる傾向にあると言われています。

片頭痛と眠気の関係

片頭痛と眠気は関係があると言われています。
片頭痛が起きる数日前や数時間前に、眠気を感じる場合やあくびが繰り返し出ることがあります。
頭痛がない人に比べると、日中に眠気を感じやすいとも言われています。
その他にも疲れやすい、首や肩がこる、やる気が出ない、光や音に敏感になる、などの症状が出ることもあります。

生理前も頭痛が起こりやすい 

女性は、生理が始まる3~10日ほど前から頭痛や眠気が起こりやすくなります。これは、月経前症候群(PMS)と呼ばれ20~30代の女性の半数以上が感じている症状です。頭痛や眠気以外にも、手足のむくみやイライラ、緊張を感じるなどの症状があります。これはエストロゲンやプロゲステロンなど月経周期に伴うホルモンの分泌量の変動が原因の一つだと考えられています。月経前症候群は、月経の始まりと共に解消されることが特徴です。また月経の前後に、月経関連片頭痛と呼ばれる頭痛が起こることもあります。

片頭痛を和らげるには?

片頭痛が起こる原因はわかりました。では、症状を和らげるにはどうすれば良いでしょうか?片頭痛を和らげる具体的な方法について紹介していきます。

1. 頭を冷やす

頭を冷やすことが片頭痛を和らげるのに良いとされています。
水で濡らしたタオルや、冷却シートを患部に当てると効果的です。患部を冷やすことで体温が下がり、拡張した血管も収縮していきます。首や太ももなど大動脈がある部位を冷やしても体温を下げることはできますが、身体全体が冷えすぎてしまうため風邪を引く原因になるので注意してください。片頭痛が起こっているときは、入浴すると体温が上がり、血管が拡張してしまうので避けたほうが良いでしょう。

2. 安静にする

安静にすることも片頭痛が起きている時には大切ですので、外出はなるべく控えて部屋で安静にしておきましょう。室内で安静にする際は、直射日光を避け、部屋の室温を少し低めにしておくと拡張した血管が収縮しやすくなります。

全ての人が、動くことで症状が悪化するわけではありませんが一般的には、騒がしい場所や光、少しのにおいにも敏感に反応しやすくなります。また、階段の昇り降りなどの日常的な動作も血流が増え、三叉神経の刺激で片頭痛を引き起こしやすくなると言われています。

3. コーヒーやお茶を飲む

コーヒーやお茶を飲むことも良いでしょう。コーヒーやお茶にはカフェインが含まれており、このカフェインは脳の血管を収縮させる働きがあります。起床時に片頭痛を感じたら、コーヒーやお茶を飲むこともおすすめです。温かい飲み物より冷たい飲み物が、より片頭痛に効果的とされています。ただし、カフェインが血管を収縮させる働きをするのは短い時間です。一時的に片頭痛を和らげる効果はありますが予防することはできないため、酷い場合には医師の診断を受けて薬を処方してもらいましょう。また、カフェインが片頭痛の誘因になるケースもあることに注意してください。

緊張型頭痛を和らげるには?

次に、緊張型頭痛を和らげるためにはどうすれば良いのか?具体的な方法についてご紹介していきます。

1. 枕の見直し

枕を見直すことで緊張型頭痛を和らげることができるかもしれません。起床時に首や肩のこりを感じる場合は、頭が高くなりすぎている枕や、沈みすぎている枕が頭痛の原因となっている場合がありますので枕を見直してみましょう。高すぎる枕で寝ていると、首のうなじ部分にある頸部が圧迫され血流が悪くなります。また、寝返りがしにくくなり、頭痛だけでなく腰痛を引き起こす恐れもあります。一方、低すぎる枕は頭部を支えることができず、肩に負荷がかかり頭痛や肩こりの原因になることがあります。緊張型頭痛を解消するためには自分に合う枕にすることをおすすめします。

2. ツボ押しとストレッチをする

こめかみあたりのツボ押しやストレッチを取り入れると、緊張型頭痛を和らげるのに効果的です。運動不足や長時間うつむいたままの姿勢が原因となる緊張型頭痛ですので、デスクワークなどで長時間同じ姿勢でいる時は、休憩時にツボ押しをする、両肩を回す、背伸びをするなどのストレッチで体をほぐしましょう。肩と頭を支える筋肉をほぐし、血行を良くすると首にたまった疲労や痛みを取り除くことができます。その際に腕ではなく肩を回すのがポイントです。気持ち良いと感じる程度に回すと良いでしょう。

3. 首や肩を温める

首や肩の周りを温めると筋肉の緊張がほぐれ、緊張型頭痛を和らげることができます。
タオルを水で濡らし、電子レンジで1分ほど温めると蒸しタオルになります。それを首や肩に当て筋肉の緊張をほぐしましょう。入浴時は、ぬるめのお湯にしっかりと浸かって両手を首の後ろで組んで首を温めると、首周りの筋肉をほぐすことができます。夏などに冷房が効きすぎて寒いと感じる時は、薄手の衣服を1枚羽織る、首にスカーフを巻くなどして温めるのも良いでしょう

寝過ぎを予防する方法

そもそも頭痛の原因となる寝過ぎをしないように予防するためにはどうすれば良いのか、その方法についてご説明していきます。

1. 昼寝をする

昼寝をして睡眠時間を補うことで寝過ぎを予防し、緊張型頭痛にならないように気をつけましょう。ただし長時間の昼寝は片頭痛を引き起こす可能性が高いため、昼寝時間は15~30分とするように注意してください。昼寝をする時間帯は、15時前までに取るのが理想的です。これは15時以降に昼寝をすると、夜の入眠を妨げてしまう恐れがあるためです。また昼寝まではできない方も、長時間同じ姿勢が続くことが多い場合は、1時間に10分~15分ほど休憩を取ると緊張した筋肉を一度リセットできるのでおすすめです。

2. 生活リズムを整える

精神的ストレスがきっかけで緊張型頭痛を引き起こすこともありますので、生活リズムを整えることも大切です。ストレスケアを意識し、規則正しい生活をする、環境を変えるなどで予防できることもあります。具体的には、日常的に正しい姿勢を意識することです。猫背にならないよう背筋をまっすぐにしてあごを引くようにする、イスに座る時は足を組まないようにするなどを心掛けましょう。また、筋肉が緊張しないようにウォーキングなどの適度な運動をすることも効果的です。特に水泳は頭や体重の負荷を減らした状態で、肩周辺の筋肉運動が行えるためおすすめです。

3. 睡眠の質を上げるための工夫をする

睡眠の質を上げることも重要です。睡眠の質を高めることで疲れが取れやすくなり寝過ぎることもなくなります。具体的な予防方法のひとつとして、睡眠の質を上げるためにはマットレスなど寝具の見直しも大切です。身体にあったマットレスを選び寝心地の良い睡眠をとるようにしましょう。他にも就寝前にホットミルクを飲むと身体が温まり、心が落ち着き交感神経や副交感神経のバランスが良くなるので睡眠の質が高まりやすくなります。一方カフェインの入ったコーヒーは、寝つきが悪くなってしまう恐れがあるので注意してください。また、注意しなければならないのは、休日の寝だめです。起床してまた寝るのでは疲れはとれず、睡眠の質を高めることはできません。

適切な睡眠時間はどれくらい?

適切な睡眠時間はどれくらいなのか?日本人の6割程度が6~8時間未満の睡眠をとっており、これが標準的な睡眠時間であると考えられています。しかし、適切な睡眠時間は個人差もあり、比較的短くても平気な方もいれば、長時間睡眠をとらなければ日常生活に支障が出る方もいます。また季節によっても、睡眠時間は変動すると言われています。日中に眠気が起きなければ、適切な睡眠時間だと言えるでしょう。数字だけにこだわるのではなく、日中の活動に影響か出ないかどうかを考えることも大切です。

きちんと寝ているはずなのに頭痛がするなら注意!

自分では、きちんと寝ているはずと思っていても、頭が痛いという方は寝過ぎ頭痛以外の症状が隠れていることも考えられます。例えば、睡眠時無呼吸症候群です。これは文字通り寝ている時に、呼吸が数秒から数十秒間止まる、浅くなるなどする症状です。寝ている時に何度も目が覚め、起きた時に頭痛や倦怠感を覚えることもありますが、自覚症状がないことも少なくありません。睡眠時無呼吸症候群については自分で検査することも可能ですので気になる方は行ってみるのもいいでしょう。

また、就寝中や、じっとした姿勢でいる時に下肢がムズムズするように感じたり、かゆみ・痛み・ぴりぴりするなど気持ち悪い感覚を覚えたりする、ムズムズ脚症候群が原因で上手く眠れていない恐れもあります。寝起きの頭痛が続くようであれば、自己判断ではなく医師に診断してもらうことをおすすめします。

まとめ

寝過ぎが原因で起こる片頭痛と緊張型頭痛。片頭痛は血液が急に拡張し、三叉神経が過度に刺激されることによって起こっています。痛みを和らげるためには、患部を冷やして血管を収縮させ、日光が届かない室内で安静に過ごすなどの方法がありました。緊張型頭痛は、肩や首の筋肉の緊張から起きている可能性があるため枕やベッドなどの寝具の見直し、ツボ押しやストレッチなどで筋肉をほぐすなどの予防方法がありました。また原因である寝過ぎを予防するために生活のリズムを崩さないこと、そして睡眠の質を高めることで頭痛を予防するようにしましょう。

この記事の監修者

医師 木村眞樹子

日本睡眠学会専門医、日本内科学会 専門医
日本循環器学会専門医、日本医師会 認定産業医

東京女子医科大学医学部卒業後、東京女子医科大学病院循環器内科入局。現在も東京女子医科大学病院、および関連病院で内科、循環器科、睡眠科として診療にあたるほか、嘱託産業医として企業の健康経営にも携わっている。