眠りの疑問 -睡眠について- SLEEP FAQ
Q
7時間が理想とは限らない!【専門家監修】理想の睡眠時間とは?
更新日:2024/03/28
A
米国の大規模な調査によれば、おおよそ6時間半〜7時間半睡眠の人が最も死亡リスクが低く長寿であると報告されています。
本当に、この睡眠時間が最適なのでしょうか?睡眠時間は年齢・性別や体質などの条件によって個人差が大きいと言われます。そこで今回は、理想の睡眠時間について徹底解説いたします。
年齢によって睡眠時間は変化する
年齢によって必要な睡眠時間は変化していきます。個人差があるものの、成人の場合は、6時間半~7時間半前後が目安であると考えられています。
夜間の睡眠時間を脳波で調べた研究では、15歳で8時間程度、25歳が約7時間、45歳だと約6.5時間、65歳は6時間と年齢に伴って睡眠時間が変化しており、成人してから歳をとるとともに20年で約30分ずつ睡眠時間が減っていきます。
また歳をとるにつれて体内時計が変化するため朝型化する傾向にあり、特に男性の方が顕著にこの傾向が見られます。年齢は睡眠サイクルにも影響を与え、歳を重ねると深い眠りである「ノンレム睡眠」が減るのに対して、浅い眠りである「レム睡眠」が多くなるため、物音が聞こえたり、尿意を感じた時に、すぐに目が覚めてしまいやすくなります。
厚生労働省による「令和元年 国民健康・栄養調査」では、成人の1日の平均睡眠時間6時間以上8時間未満がどの年代でもほとんど半数という結果でした。6時間未満は30〜50代男性と40〜50代女性で4割超もいました。
関連リンク:厚生労働省 「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」
さらに総務省統計局が令和4年夏に発表した 「令和3年 社会生活基本調査」によると、日本に住む10歳以上の1日の平均睡眠時間は1日7.54時間でした。そのうち男性は7.58時間、女性7.49時間という結果で、男女別では睡眠時間に大差はありませんでした。
-年齢別の最適な睡眠時間について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください-
睡眠サイクルにも個人差がある!
心身ともに健康を維持するには質の高い睡眠をとることが必要になります。
この睡眠には、「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」の2種類のサイクルがあり、人間の睡眠はノンレム睡眠とレム睡眠の1セットが交互に繰り返されて成り立っています。入眠すると最初に深い眠りである「ノンレム睡眠」から始まり、一気に睡眠が深まったのち、徐々に眠りが浅くなります。次に覚醒に近づいて「レム睡眠」に切替わります。しばらくしてから再び「ノンレム睡眠」で深い眠りに到達し、その後「レム睡眠」で覚醒に向かいます。
一般的に「1セット90分」と考えられ、このサイクルを一晩で4〜5回交互に繰り返して、だんだん眠りが浅くなりレム睡眠の時間が長くなると、朝の目覚めへとつながります。ただし睡眠のサイクルにも個人差があるため、1セット90分は平均的な目安です。実際には1セットが約60分の場合もありますし、120分の人もいて、個人により差が出ることがあります。
【ノンレム睡眠とレム睡眠の特徴】
ノンレム睡眠 |
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レム睡眠 |
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適切な睡眠時間の計り方とは
睡眠には個人差があり、公表されている理想の睡眠時間はあくまでも目安に過ぎません。
自分にとって適切な睡眠時間の計り方をご紹介します。
- 就寝時間を毎日同じにする(できればサーカディアンリズム(体内時計)に影響が出にくい午後10時ごろ就寝するのがおすすめ)
- 目覚ましを使わずに自然に目が覚めるまで眠る
- 自然な睡眠生活を1週間以上続ける(初めの1週間はそれまでの睡眠不足(睡眠負債)を補うことがあるため適正な睡眠時間は1週間後から現れます。)
自然な睡眠を心がけることにより、自身の理想の睡眠時間がわかるようになります。ただし生活リズムが不規則にならない時期や環境を選んで実施することが前提条件です。女性の場合、生理期間中は女性ホルモンの影響で睡眠が一定化しない傾向があるため、時期を避けるようにします。
また夜勤などで昼夜逆転して日中に睡眠をとる場合や窓から明かりが差し込む環境なら、普段から光を遮る遮光カーテン等を利用して入眠しやすい環境を整えることが大切です。
寝不足や長すぎる睡眠時間の問題点とは
自分にとって理想の睡眠時間を知ることができたら、できる限り毎日継続するようにしましょう。理想の睡眠を維持していけば、起きている間のパフォーマンス効率が改善します。
寝不足の場合や逆に睡眠時間が長すぎる場合の問題点やリスクについても知っておきましょう。
睡眠時間は長すぎても短すぎてもよい効果は期待できません。心身の健康のためにも、その人にとって最適といえる「理想の睡眠時間」を知ったうえで、規則正しい睡眠生活を送るようにしましょう。
【寝不足の場合】
全般 |
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身体のリスク |
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脳機能のリスク |
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精神のリスク |
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行動のリスク |
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【睡眠時間が長すぎる場合】
睡眠時間が長すぎることで以下のような弊害が起こり、結果的に睡眠の質が低下することに繋がります。
- 血行不良
- 腰痛
- 夜に眠気を感じない
- 夜更かしをする
- 夜中に目が覚める
- 熟睡できない
- 睡眠リズムが崩れる
- 翌日 心身の調子が乱れる
なお寝不足の特異な例として、睡眠時間が極端に短く1日4〜5時間程度で元気に生活ができる「ショートスリーパー」と呼ばれる人たちが存在します。個人の体質や遺伝子などの先天的な要素が影響すると考えられていて、訓練で習得できるものではありません。ショートスリーパーを目指して無理に睡眠時間を削ると、体調を崩したり死につながる病気を招く危険性があるので要注意です。
-寝すぎてしまう原因について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください-
睡眠の環境を整えることも重要
生活リズムや使っている寝具によっては、例え睡眠時間が十分であっても眠気を感じるケースもあります。例えば、就寝前にスマホやパソコンを操作していると、眠気を引き起こすメラトニンの分泌が抑制され、睡眠の質が低下します。結果として、睡眠時間を十分に確保しても、日中に眠気を感じてしまうことがあります。
また、身体に合わない寝具を使い続けていると、身体が痛みや不快感を覚え、これもまた睡眠の質を下げる原因となります。逆に言えば、従来は8時間の睡眠が必要だった方でも、生活リズムや寝具を正すことで、6時間の睡眠でも活発に活動できる可能性もあります。
先に述べた年齢以外の要素でも、最適な睡眠時間が変化することを留意しておきましょう。
まとめ
これまで7時間睡眠が最適と考えられてきましたが、必ずしも十分な睡眠時間の基準ではありません。
睡眠時間や睡眠サイクルは、年齢・体質などの条件によって人それぞれで、睡眠時間が長すぎても短すぎても問題が生じます。理想の睡眠時間を知るためには、就寝時間を毎日変えずに自然に目覚める生活を、少なくとも1週間続けましょう。自分の睡眠サイクルに合った適切な睡眠時間がわかるはずです。また睡眠の質を向上させるには睡眠環境を整えることも非常に効果的です。